「BIG」に見るターゲティングとプロモーションの基本

残暑お見舞い申し上げます。
今年の秋は残暑が厳しいという気象庁の見解が出ていましたね。ただ、昨日は雨で涼しかったこともあり、今朝の通勤電車は正直寒い…

ところで私は通勤時間にしばしば電車の車内広告を眺めて過ごしていまして、今回はそんな車内広告から。


「当たりたければ買うしかない!」

小見出しはご存知、宝くじのBIGの広告メッセージです。これ、当たり前のことしか言ってないのですが、うまくターゲットセグメントの心理をついたマーケティングだなと感心しとります。

宝くじ自体は日本国民全てが知っていると言っても過言ではないわけですが、当初「BIGは宝くじである」ことを理解してもらうため認知向上プロモーション中心でやってきたBIGも、ある程度の市民権を得て次の段階にステップアップしたいと考えるのは自然な発想です。
宝くじって、買って得する確率=「期待値」を頭で理解している合理的な層はもともとあまり手を出さないわけでして、このキャッチコピーは一獲千金を夢みる、私を含めた非合理的な夢見層に向けたものだと推察されるわけですが、彼らの背中を一押しする「何か」をこのコピーは提供している気がします。
「そうか、買わないと確かに当たらないよなー」という、よくわからかい納得感を。

ちなみに、収支で見たら宝くじは損する仕組みですが、買ったときのワクワク感まで含めると、合理的な層の一部は動くかもしれません。
彼ら目線だと、「これは損得ではなく、ワクワク感を楽しむエンタメ消費である」的な判断になるでしょうか。

いずれにしても、わかりやすいキャッチコピーはマーケティングの王道なので、やるなBIG、という所感。

ちなみに、以前のキャッチコピーは「6億円あたると年収2,000万の生活が30年もできるよ!」だったのですが、これを見て「宝くじは非課税だから計算が違くて、年収にすると4,000万近くじゃないかなー」とか色々考える層ははなからターゲットではなくて、やはり「なるほどーそんな生活できたら確かにいいよなー」と考える、私を含めた夢見層がターゲットなのでしょうね、きっと。


「再定義」をうまく使う

前述のような、一見小馬鹿にされているかのようなプロモーションを仕掛けてくるBIGですが、なかなかよくできたキャッチコピーも投入してます。
「コンビニは、食事や雑誌が買えるBIG売場である」という、最近の広告もマーケティングの基本に則った秀作かと。

少し前まで戦略論はポーターの競争戦略が全盛でしたが、ポーターが主張するポジショニングは、もちろんブランドイメージも該当します。
今回の広告では、販売チャネルを再定義している点が潔いなと。

BIGはコンビニでも買えるよ、ではなく、あくまでも「コンビニはBIG売場である」と断言してしまうこのよくわからない自信。

これこそ、「なるほどー」と情報を無批判に受け入れてしまう僕ら夢見層を取り込むのに良いマーケティング手法です。

出来る男は○○を使う、的な手法とも少し違う、世の中こういうものなんだ、と断言してしまう手法は、そうかなー?と疑問を呈する層に向けたものではなく、無批判に受け入れるフォロワーがターゲットなんだなーと。

昔、ある雑誌に、金持ちは投資、貧乏は宝くじ、ていう記事が載っていましたが、やっぱ宝くじって、弱者からさらにマネーを吸い取るツールなのかもしれません。

南無。